「トンマナは、過去のものに合わせてください」とクライアントに言われ、「トンマナ」が何かわからず、困っていませんか?
トンマナとは「トーン&マナー」の略で、コンテンツに統一感を持たせるための指針のことです。トンマナはWebライティングに限らず、Webサイト全体を対象として設定します。
この記事では、トンマナの意味や内容、Webライターがトンマナを守るためのポイントをWebライター初心者向けにわかりやすく解説します。トンマナを理解することで、Webサイトの効果を最大限に活かすための文言の選定や文章構成などを考えられるようになるでしょう。
トンマナとは?
トンマナとは「トーン(Tone)&マナー(Manner)」の略で、トーンは口調、マナーは態度という意味があります。
トンマナが異なれば、同じ内容でも印象が変わります。例えば、次の①〜③は、トンマナが異なる例です。
(例)
①知名度は低いが、りんごはバラ科だ。
②あまり知られていませんが、りんごはバラ科に属します。
③実は、りんごって「バラ科」なんです!知っていましたか?びっくりですよね!!
例の①〜③は、トンマナが違うということが分かるのではないでしょうか。
例では文章でトンマナの違いを表しましたが、トンマナの対象は文章だけではありません。トンマナの対象には、デザインや表示する広告の内容など、ユーザーの目に触れるものすべてを含みます。
例えば北欧インテリアの「IKEA」といえば、「青と黄色」とか「ポップで大胆な柄」など、一貫して北欧らしさを感じるイメージを持ちませんか?それはトンマナが統一されているからです。
特定のイメージを伝えるために「どのような言葉づかいや色使いなどでユーザーに接するか」という「トンマナ」を決めて実行することは、ブランディングにおいてとても重要なのです。
「トンマナ」と「レギュレーション」の違い
レギュレーションとは、文章を書く際のルールを具体的に設定したものです。例えば、記号は半角で書く、「分かる」は漢字をひらく、というように用語や語尾の使い方が明文化されたものを指します。
トンマナとレギュレーションでは、対象とする範囲が異なります。トンマナはコンテンツ全体を対象とした方針である一方、レギュレーションは文章を対象とした方針です。
つまり、トンマナはレギュレーションを包括する概念だといえます。
「トンマナ」はライター業界の用語というよりは、デザイン業界の用語です。
ただ、Webサイトにせよ、雑誌にせよ、YouTube動画にせよ、文章は使われるため、Webライターも耳にする機会があります。これを機にしっかりと理解しましょう。
Webライティングでも「トンマナ」が大切な理由
Webライターの仕事では「トンマナ」という言葉がよく使われるケースと、全然使われないケースがあります。「トンマナ」という用語が使われるのは、ランディングページ(LP)の制作のように、文章に加えてWebデザインの要素が入る場面です。
一方で、オウンドメディアのブログ記事制作のように、決まったデザインの中での記事制作をメインに請け負うWebライターの中には「トンマナ」なんて聞いたことがない、という方もいるかもしれません。
しかし、すべてのWebライターにとって「トンマナ」は非常に重要な考え方なので、かならず理解しておきましょう。
「レギュレーションを理解するだけじゃ駄目なの?」と思った方、ダメです。
その理由をこれから説明します。
先ほど述べたとおり、レギュレーションは「トンマナを揃えるための一つの具体的な手段」です。しかし一方で、完璧なレギュレーションを作るのは困難なことでもあります。なぜなら、記事の話題や文章表現の幅は広く、あらかじめすべての内容は想像できないからです。
筆者が経験したものでは、比較サイトの記事で「特定の商品の営業色が強くならないように」であったり、葬儀を扱う記事で「共感を示しつつも感情を押さえた表現で」といったものがありました。このような内容は、レギュレーションにはしづらいものです。
Webサイトの内容や主旨、会社の特徴などを考えれば、当たり前だと思うかもしれません。しかし、この当たり前に大事にしたい感覚から、これから新しく生み出したいイメージも含めて「トンマナ」なのです。
「Webライターは依頼元のWebサイトや会社情報をよく見ましょう」と言われます。これは「トンマナ」を理解するためにも欠かせない調査なのです。
これまで「トンマナ」という用語を知らなかった方も、過去のレギュレーションに含まれていた内容だなと気づいたり、無意識に依頼元のトンマナを理解しようとしていたりするのではないでしょうか。
Webライティングで押さえたい「トンマナ」のポイント
「トンマナを統一する」といっても、具体的に何を意識すればいいのかよくわからない、という方もいることでしょう。
ここでは、既存のブログサイト参考にしてトンマナを合わせる場合に、特にWebライティングにおいて気をつけたい「6つのポイント」を解説します。
それぞれ詳しく解説していきます。
対象読者と内容の方向性
はじめに大切なのが「どのような読者に向けた記事なのか」です。対象読者が誰かによって、言葉づかいや使う単語が変わってきます。
そしてもう一つ大切なのが、記事の内容の方向性です。記事の方向性を考えるときには、「その読者が記事を読んだあと、どのような気持ちになってほしいのか」を考えるようにしましょう。
例えば、検索キーワード「Webライター やばい」で、Webライター初心者向けの記事を書くとしましょう。このとき、読後に「Webライターを諦めてほしい」のか、それとも「Webライターを諦めないでほしい」のかによって、記事の内容は180度変わります。
そのため、対象読者が記事を読んで、どのような気持ちになってほしいのかを考えることが重要なのです。
クライアントからキーワードを渡された際、上記のように複数の結論が考えられる場合には、執筆前に必ずクライアントに結論の方向性を確認しましょう。
ここで考えた「想定読者」と「記事の方向性」が、このあと決める文体やレギュレーションの内容のベースになります。そのため「たぶん、こうだろう……」で仕事を進めず、クライアントにしっかりと確認することが大切です。
クラインアントへの内容確認は、信用アップにもつながりますよ。
構成
記事全体の文字数や見出しの数、一つの見出し内の文字数など、既存の記事構成を把握して、そろえるようにしましょう。記事の構成や文字数を揃えておくことで、読者は読み方のリズムになれて読みやすくなります。
大まかな構成のほかにも、改行の位置や画像を挿入するペースなども揃えると、より統一感のある記事を作成できます。
文体(ですます調・である調)
想定読者を具体化できたら、つぎに文体を決めます。文体とは簡単に説明すると「ですます調」で書くのか、「である調」で書くのか、ということです。
「ですます調」と「である調」では、文章が与える印象が大きく異なります。文章の内容と与えたい印象に応じて、適切な文体を選ぶようにしましょう。
「ですます調」と「である調」は、同じ記事内では混在しないようにします。「ですます調」と「である調」が混在してしまうと、非常に分かりづらい文章になってしまいます。
特定の書き方に関するルール
例えばタイトルや見出しの書き方は、文字数の制限やSEOの観点から本文とは異なったルールが適用されることがあります。ルールだと明言されていない場合でも、既存の記事と大きくかけ離れないように注意が必要です。
クライアントがアバウトに「トンマナを合わせて」という場合、本文に目が行きがちですが、上の例のような目に入りやすい箇所に注意するといいですよ。
言葉づかい
本文の言葉づかいは、はじめに考えた「対象読者と達成したい状態」からある程度の予想ができます。
この予想を持った上で、クライアントの考える適切な言葉づかいを理解するのが大切です。そのためには、既存の記事で人気のものを3つほど読みましょう。これにより「どのような言葉づかいが好まれるのか」や「どの程度、言葉づかいの違いが許容されるのか」がわかります。
「言葉づかい」はなかなか言葉にしづらいものですので、感覚としてしっかりと掴みましょう。
依頼元のブログサイトで「よく読まれている記事」を参考にするといいですよ。
本文の表記ルール
本文の表記ルールとは、いわゆるレギュレーションのことです。クライアントとのやりとりでWebディレクターが存在しない場合、レギュレーションが用意されないケースも少なくありません。
レギュレーションがない場合には、既存記事をいくつか読みながら自身で簡単なレギュレーションのメモを作成するのがおすすめです。次のポイントを踏まえて既存記事を読み、表記に注意する点をピックアップしましょう。
トンマナが決まっていると「書きやすくて、読みやすい」
この記事では「トンマナ」について解説しました。トンマナとは、文章だけではなく、デザインや広告などユーザーの目にふれるすべてを含めて、一貫性や統一感をもたせるためのルール設計のことです。
Webライティングでトンマナを統一するためには、「ですます調」か「である調」かを目的に合わせて選択したり、構成や用語などにルールを持たせたりすることから始めましょう。トンマナは包括的な概念なので言語化するのが難しい面がありますが、一つひとつのライティングルールを決めていくことで自ずと定まってきます。
トンマナのルールを言語して明確にすることは、記事の方針を固めて品質を上げることにつながります。Webライティングしやすい上に、読者にとっても読みやすく、メリットが大きいものです。
レギュレーションの上位概念であるトンマナを理解して、さらに高品質な記事の執筆をめざしましょう。